新たな展開・・・ コスメ分野へ
ペン先からコスメへの展開は、少し意外なところから始まった。最初にコスメとして使われたネイルケア用品は、1970年代からクライアントの転用により始まっており、文具用のペン先がまさかコスメに使われているとは知らなかったのだ。なかでもラインマーカー用のペン先は太くて中央が柔らかく、甘皮処理などネイルケアにぴったりだと海外では定番商品になった。また、コスメの液剤は、体に触れるものなので成分がやさしく、水性インクに似ていたためラインマーカー用のペン先と相性がよかったのだ。
1980年になると、筆ペンの延長でアイライナー用のペン先の開発が進められた。これは、既存のクライアントである筆記具メーカーが、アイメイク用品を扱っていることから始まった。紙に書く文具とは違い、肌に描くコスメに使うペン先は柔らかさがポイントだ。穂先の形状を加工するため、柔らかいペン先を安定して製造するのが大きな課題となった。男性の開発者も自分の顔にアイメイクをして、実際に柔らかさを確認しながら試行錯誤した。開発に熱中するあまりメイクのまま帰宅しそうになったこともあったという。
今では改良を重ね、細くてしなやかペン先が国内外のさまざまなアイメイク用品に使われ、多くの人気商品に採用されている。2007年からはペン先を使ったリップも登場した。はみ出さず手軽に塗ることができると海外を中心に人気となっている。コスメは流行があるため、市場の動きを敏感に察知しなければならない。市場を創り出すという気概のもと、ヒット商品の影の立役者として常に3〜5年先を見越した新商品の開発に取り組んでいる。
おかげさまでオーベクスは
創立130周年を迎えました
オーベクス株式会社は、日本の資本主義の父と称される渋沢栄一によって1892年(明治25年)日本初の帽子製造会社(当時:東京帽子株式会社)として創立されました。以来、帽子のフエルト製造技術と精密加工技術を基礎として、サインペン先(ステイショナリー用ペン先、コスメチック用ペン先)やメディカル分野の医療機器(ベセルフューザーおよびガイドワイヤー)で、世界中に独自の価値を提供してきました。
創立から130年にわたり、当社の発展を支えてくださったお客様をはじめ、全てのステークホルダーの皆さまに心より感謝申し上げます。
オーベクスはこの130年の間に、それぞれの時代における産業や人々の生活の変化と進化に適応し、アップデートしてまいりました。オーベクスが新たな挑戦と追求を続けてこられたのは、皆さまのご支援とご信頼の賜物であると重ねて感謝申し上げます。
70年後の22世紀に向けて、“人にやさしい未来をつくる”ために、オーベクスは日々努力して社会に貢献してまいります。